一人でいるときこそ、何かとつながっている
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人といると疲れる。
自分ばかり話さないよう、相手に話をさせる。興味のある話ばかりではない。「つまらないからやめて」とは言えないから、ジッと話し終わるのを待つ。
ようやく言葉が途切れてホッとする。だが「ふーん」で終わらせては失礼だ。そこで興味がないのに質問してしまう。また退屈な話が続く。
かと言って、自分ばかり話すのもつらい。途中で話し飽きても「もう嫌になったからやめるね」とは言えない。ウンザリした表情が出ないように努める。人といると、こうした無理を重ねてしまう。
そもそも、大きな声で話さないといけないのがつらい。僕がちょうどいいと思う音量では、他人に届かないのだ。いつも小さな声でボソボソとしゃべっていたい。
誰かといるより一人がいい。一人でいるときこそ、何かとつながっていると感じる。
たとえば空を見上げる。そして遠い国や、既にこの世にない人々に思いを馳せる。こういうことは誰かと一緒にいたらできない。
平安貴族が見た、春の夜明けに山の輪郭がだんだん白んでいく様子を、僕らも見ている。
枝や草花が風で揺れる。あれは彼らの表情だ。ビュウビュウ、バサバサ鳴るのは、彼らの声だ。
植物は自分からは話さない。語りかけると黙って聴いてくれる。
いつも誰かといたがる人は、見えるものにこだわりすぎている。金子みすゞではないが、見えぬものでもあるんだよ。
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